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  • 柴田是真
    生誕二百年展
  •  柴田 是真  (しばた ぜしん) 1807〜1891

    籠秋草蒔絵印籠
    (かごのあきくさまきえいんろう)

    全体写真  柴田是真作

     製作年代 :江戸時代末期
    安政〜文久頃(circ.1860)

     法量 :
    縦61mm×横48mm×厚16mm

     鑑賞 :
    画・蒔絵とも是真らしさが顕著に表われた作品です。 また蒔絵の他に漆絵・素彫りなど是真でなければ出来ない技が使われています。 緒締は珊瑚珠、根付は「萩兎蒔絵箱根付」が取り合わされています。

     意匠 :
    籠に籠に薄・葛・女郎花・菊の秋草と鎌を投げ込んだ意匠です。 籠に秋草の意匠は是真が好んだモチーフの一つです。 この作品では籠に鎌を掛けていますが、籠に瓢箪を括りつけた意匠の作品もあります。

     形状 :
    羊遊斎の印籠には同じボディーを使ったものがいくつか見られます。 しかし是真の場合はほとんどが異なります。 恐らく注文者の体格と好みと印籠の意匠に合わせて、 その都度最もふさわしい形と大きさを決めたのでしょう。 この胴張形に紐通しを付けた形は、是真がしばしば好んで作っています。 そしてこの印籠で特筆すべきは小ささです。 それがモチーフを間延びさせずに、 愛玩品として素晴らしさをより一層引き立てているのです。

     技法 :
    表拡大写真 ・金粉溜地に高蒔絵・研出蒔絵、そして丸毛彫刀による素彫りを駆使しています。
    ・籠の中の部分は、研出蒔絵になっています。 秋草の1本1本は、籠の中では研出蒔絵で表され、 籠から出ると高蒔絵になります。
    ・女郎花の花には平目粉が一つずつ丁寧に置かれています。
    ・葛の花は弁柄漆に四分一粉を蒔き付けており、 薄の穂は透漆で描かれ、淡く銀蒔きされています。 このような部分では、置き目をするとその線が透けるため、 置き目ができません。画才がある、是真ならではの技法です。
    ・籠に投げ込んだ鎌は鉄錆塗とし、刃に銀粉を打ち込んでいます。
    銘写真 ・菊と撫子、 流水文の丸毛彫刀による素彫の冴えは実に素晴らしいものです。 完成した蒔絵の部分に刀を当てて削り取るということは、 全く失敗が許されません。画と刀技において腕に覚えがある是真ならではの離れ業なのです。

     作銘 :
    底部には「是真」の丸毛彫刀による素彫銘があります。

     伝来 :
    伝来は不明です。2004年に国内で出現しました。

     展観履歴 :
    2007 「柴田是真生誕二百年展」
    2012 根津美術館「ZESHIN」展
    2019 東京富士美術館「サムライ・ダンディズム」展
    2022 国立能楽堂資料展示室「柴田是真と能楽 江戸庶民の視座」展
    2025 東京黎明アートルーム「柴田是真 −対柳居から世界へ−」展


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    青海波宝舟蒔絵印籠
    (せいがいはたからぶねまきえいんろう)

    青海波宝舟蒔絵印籠

     柴田是真作

     製作年代 :江戸時代末期
    安政〜文久頃(circ.1860)

     法量 :
    縦65mm×横47mm×厚17mm

     鑑賞 :
    金地に是真が復興して得意とした青海波塗の印籠で、画・蒔絵とも是真らしさが顕著に表われた作品です。 舟の上の緻密な宝尽も見どころです。
     緒締は金無垢松干網鳳凰の透彫、根付は是真作「群鶴蒔絵根付」が取り合わされています。

     意匠 :
    青海波に宝舟で吉祥の意匠です。宝舟には表には若松・梅に宝珠・丁子・橘・分銅・笠が、 裏には宝袋・打出小槌と竹が表されています。
     ほぼ同意匠で、地を黒蝋色塗地とした「青海波宝舟蒔絵印籠」 が古くから知られ、現存しています。

     形状 :
    常形4段、紐通付の小ぶりな印籠です。

     技法 :
    ・普通ならば金粉溜地に先に青海波塗を施すところですが、先に高蒔絵の舟を作ってから青海波塗を施しています。 金粉溜地に黒の青海波塗はコントラストが強く、くっきりと冴えて見やすいのですが、その分ごまかしが効きません。 櫛状の箆で掻き取った絞漆を全く残さないよう、強く手際よく除去する必要があります。 特に上方にまるで遠山のように施した青海波塗は何気なくやったように見えて、 下の方の波打ちぎわの線がスッと抜けていく処理は大変な技術が必要です。
    ・宝尽の高蒔絵には焼金粉・青金粉・銀粉を用い、切金を置き、笠は洗い出しとしています。 若松の穂は朱金としています。橘の実と葉に素彫が施されています。
    ・段内部は金梨子地で、釦は金地です。

    青海波宝舟蒔絵印籠 青海波宝舟蒔絵印籠  作銘 :
    底部には「是真」の丸毛彫銘があります。

     伝来 :
    伝来は不明です。2024年に国内で出現しました。

     柴田是真作「群鶴蒔絵根付」 :
    柴田是真作「群鶴蒔絵根付」 木胎刳物の合子形根付で、金粉溜地に焼金粉と青金粉の高蒔絵で琳派風の群鶴を表裏に表しています。
     内側は金地とし、裏面に「令哉」の蒔絵銘と「光工」の朱漆描印があります。
     「令哉」は最初の上洛から帰る25歳まで使用した号で、 「光工」も『書畫薈粹』の挿絵にもみられ、30歳ころまで使用していた印章です。
    柴田是真作「群鶴蒔絵根付」  江戸で上洛前に作った20歳前後の極めて稀な最初期作です。
     この頃の令哉銘の作品は「秋草鹿蒔絵印籠」・「名物裂蒔絵印籠」・「蜂蒔絵印籠」・「菊桐紋蒔絵根付」(クレス・コレクション) など合計5点しか確認されていません。

     展観履歴 :
    2025 東京黎明アートルーム「柴田是真 −対柳居から世界へ−」展


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    2005年11月22日UP
    2025年10月21日更新